2020年01月20日発売の『AERA』No.4 増大号の特集の中で当院の取り組み、コメントを紹介していただきました。
特集の タイトルは『耐性菌から家族を守る』。
耐性菌とは抗菌薬(抗生物質)が効かない、薬剤に耐性を持つ菌のことで、この耐性菌によって国内で年間8千人以上が死亡している可能性があります。抗菌薬が効かずに標準治療に反応しないために感染症を治すことができず最悪、死に至ることさえあるのです。
他人からもらう耐性菌と、自分の体の中で変異してしまう耐性菌があり、メカニズムはさまざまですが基本的には「使いすぎると耐性ができやすい」ため、抗菌薬を不必要に使うのは避けるべきです。
不必要な抗菌薬処方の代表例は身近な「風邪」です。ウィルスが原因になる風邪に抗菌薬は無用であり、感染症教育を受けた多くの医師も風邪に抗菌薬の効果がないことを知っていますが、「風邪に抗菌薬」の誤解は、世間では根強く残っています。また風邪に抗菌薬を頻繁に処方する医師がいるのも事実です。症状が治ってきて途中で服用を辞めるケースも耐性菌を作るリスクとなるため注意が必要です。
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以下記事抜粋
『クリニックだからこそ』
今回の取材で医療関係者から多く聞かれたのが、「患者から強く求められれば、クリニックなどを経営する開業医は処方せざるを得ない」という声だった。
だが、啓発を行う医師たちもいる。東京・中目黒。嘉村洋志医師(41)と瀨田宏哉医師(36)が18年に開院した「ロコクリニック中目黒」は、夜間診療などで地元の人たちに重宝されている。開業前に勤務していた病院では、ともに救急医として軽症から重症まで多くの患者をみてきた。2人は口をそろえる。
「抗菌薬は必要とされる細菌性感染症にだけ使うものです」
ロコクリニック中目黒では、待合室に厚労省が作成するAMR(薬剤耐性)に関するパンフレットを置いて、患者の理解を助けている。風邪で抗菌薬の処方を求められるケースもあるが、「不必要と説明します」。場合によっては不要な抗菌薬を欲しがる患者に不満を持たれ、ネットで批判的な口コミを書き込まれることもある。それでも抗菌薬を安易に出さないのは、徹底した考えがあるからだ。嘉村医師と瀨田医師は言う。
「風邪の患者さんを診ることが多いクリニックだからこそ、できる啓発活動がある」
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また今号の特集の続きは「抗インフルエンザ薬は健康なら不要」というもの。
新薬ゾフルーザ耐性ウィルス出現しており、日本小児科学会は少なくとも12歳未満の小児に対する積極的な投与は推奨しないとしています。「高齢者や子ども、基礎疾患のある人、妊婦などでなければ自然に治る病気であり、個人的に得られる利益と耐性化ウィルスが世に広がった時の公衆衛生上の不利益をよく考えて処方を検討すべきである」、という専門家の意見が述べられています。
当院でも、抗インフルエンザ薬の得られるメリットとデメリット(副作用含め)を正確にお伝えし、処方については個別によく相談するようにしていますので、ご質問があれば遠慮なくお伝えください。
嘉村、瀬田